抽象的な視点が世界を見る。具体的な事象がただそこにある。


抽象的に考えることが、どれほど強力かということを見せ付けられた気がした。


全く記号論の知識のない僕には、途中、読むのに苦労したところもあったけれど、内容はおもしろかった。今まで僕の考えもしなかった、ものの見かたがあった。

いろいろなコミュニケーション(伝達)を抽象化して、記号やコードやコンテクストの概念を抜き出す。これらの活発な相互作用を見て、最後には芸術や文化を記号論で解剖する。具体的なものだけ見ていたら、到底ここまでたどり着けない。


抽象化の価値は、ここにあると思う。具体化を極めても、それしか見えないし、それしかできない。


日本語ではなぜか、「抽象」という言葉には良くないイメージがついて、「具体」には良いイメージがつく。抽象は英語でabstractだと思うが、そこに良し悪しはとくに感じない。

「もっと具体的にしろ」とは誰でも1度は聞いた言葉だろう。それに従って考えを具体化したとしても、元の考えを捨ててはいけない。元の考えはより広い世界を見ているという価値がある。